踊る民族の足音は不器用に呼吸する

悩みながらも、ダイナミックに足音を踏み鳴らして生きたい。 踊る、音楽、本、人生について。熱い語ログ。

迷ったら1番ポジションへ。「NY・バード」

夏は仕事の休暇をとって、バレエに行く。

普段、受けられないクラスを受ける。

休暇は短くて悲しいのだが、週2でレッスンを受ける。

バレエは、体中の毒素をすべて浄化してくれる。

 

レッスンをがっつりやった次の日は、

朝、目をつぶったまま、

身体をゆったりと伸ばせていることを実感するのが気持ちいい。

静かな時間の中で、

身体の隅々まで、

穏やかで、満ち足りているのを感じる。

そして、確実に体は変わる。

しなやかな筋肉がうっすらとついてくる。

体がきちんと呼吸し、本来の自分に戻ったかのように、

魂が生き生きしてくる。

 

 

昔、がむしゃらに踊っていた頃、

素敵なダンス漫画と出会った。

 

NY・バード 1 (集英社文庫(コミック版))

NY・バード 1 (集英社文庫(コミック版))

 

 

 

NY・バード 2 (集英社文庫(コミック版))

NY・バード 2 (集英社文庫(コミック版))

 

当時は、本でもテレビ番組でも雑誌でも、もう何でも

タイトルに踊り関係のワード入っていたり、

民族舞踊でも何でも踊りの絵や写真を見ると、

切り抜いてファイリングしたり、何でもむさぼるように読んでいた。

しかも、NY!ブロードウェイ!!きゃーーー!絶対買う!!

速攻、タイトル買いをした。

 

そして、2巻の表紙!!

この跳躍のエネルギー。

憧れた。

この表紙に、自分の夢があふれているようで。

興奮しながら購入したのを覚えている。

 

一番好きな場面があった。

 

その場面は、

ブロードウェイで活躍した演出家に、

主人公がふらついた稽古を叱られ、

別の稽古場で1番プリエからやり直せと命じられる、という場面。

泣きながら踊る主人公に、演出家がこんな言葉をかける。

 

「迷って決めかねて・・・・進む方向がわからなくなったら

気持ちも踊りもバラバラなってしまったら

バーへ戻って1番からだ。

一番最初の純粋なところへ立ち返って決めればいい」

 

私は大人になってからバレエを始め、

トウシューズを履く技術までは至っていない。

そのバレエスタジオに10年以上在籍しておきながら、

がむしゃら時代を経て今の仕事についてからは、

半年レッスンを受けてないことなんてざらにある。

私は、一向に上手くならない生徒なのだ。

行ったり行けなかったり、

正直、ここで語れるほど、上手くない。

 

けれど、この場面のセリフは、ずっと胸の中に大切にしまってある。

精神的に疲れた時は、

必ず、時間を作ってでも、

在籍しているバレエスタジオに行く。

そして、先生がセレクトしたピアノ曲に身をゆだねながら、

1番ポジションからバーレッスンを受ける。

そうすると、

精神と体の軸が整い、

自分の気持ちに向き合ことができる。

 

“あぁ、私はこんなにも踊りたかったんだ”

 涙が溢れてくるのだ。

 

そして、悩みも、迷いも消えていく。

 

あいかわらず、私の1番ポジションはきれいに開かない。

それでもいい。

 

“進む方向がわからなくなったら1番からだ。

一番最初の純粋なところへ立ち返って決めればいい”

 

バレエを習いたくて習いたくて、

やっと夢が叶ったあの日。

初めてバーの前で1番ポジションで立った

あの純粋な感動を、

生涯忘れることはないだろう。

 

迷ったら、1番ポジションへ。

 

       odoruotome☆